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EPUB3固定レイアウトは、実装方法と市場の方向を両方おさえておく必要がある(境祐司氏インタビュー) | Open EPUB room

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EPUB3固定レイアウトは、実装方法と市場の方向を両方おさえておく必要がある(境祐司氏インタビュー)

──EPUB3の固定レイアウト表現の現状は、どのように捉えればよいのでしょうか?

境:まず2種類の考え方があって、絶対配置でテキストや図版をページの任意の場所にレイアウトしていく方法と、単に画像を貼り付ける方法があります。前者は絵本や図版の多い実用書など、リフローのEPUBでは表現しにくいコンテンツを拡張技術によって可能にしたものです。後者はいわゆる「自炊」に近いものですが、緊デジ(コンテンツ緊急電子化事業)で採用される「フィックス型」(XMDF、.book、EPUB3)なども含まれます。
IDPFが公開している固定レイアウトの仕様は、すでに商用で利用されている複数の方式を取りまとめているドキュメントだと捉えてよいと思います。

──画像貼り付けの方法は、スキャンしたものであろうと何であろうと、画面解像度によって見難かったりという問題がありますね。

境:スマートフォンの小さなスクリーンでは読みづらいなど、可読性や視認性については、PDFと同じデメリットが出てきてしまうということになります。緊デジの場合は、電子書籍の数を増やすという目標があり、そこから逆算すると「フィックス型」も選択肢に入れていかないと間に合わないという判断ではないでしょうか。

──最近公開されたIDPFの仕様とは?

境:IDPFの仕様書には、いくつかのサンプルコードが掲載されていますが、指定したページだけに画像を貼り込むことも可能です。例えば、表紙を固定レイアウト、まえがきをテキストで表示、中扉を固定レイアウト、といった使い分けができます。
今のところ、この仕様を実装しているリーディングシステムはありませんので、Readium(EPUB3リーディングシステムのリファレンス実装)で確認するしかありません。Readiumは、この仕様の一部を実装していますので、前述したテキストページと固定レイアウトページの混在したコンテンツを表示することができます。

──その仕様はどのように確定したのでしょうか。

境:固定レイアウトは、リフロー処理では表現しにくいビジュアルが主体の電子出版で、大変有効な技術です。出版社からの強い要望があり、最優先で議論が進められ、2012年3月に公開されました。
そもそも、発端は2010年12月にAppleが、自社が運営する電子書籍ストアiBookstoreで絵本や料理の本など、EPUBでは作りにくいコンテンツを独自拡張によって対応させたことです。その後、Barnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)やkobo(コボ)、Sonyなど、EPUBを採用している電子書籍ストアが同様の拡張によって、書籍のラインナップを増やしています。このような、企業の独自拡張によるEPUBの派生バージョンが増えてしまうと、標準化フォーマットの信頼性を低下させてしまいますが、ウェブコンテンツとは異なり、クローズドな環境になっていますので(DRMによって他のリーディングシステムでは読めないため混乱は起きない)、コミュニティからも大きな批判は聞きません。
ただし、独自拡張が先行してしまった現状を放置しておくわけにはいきませんので、IDPFが「取りまとめる」(※統一するわけではない)という形で仕様を公開しました。今後、この固定レイアウトの仕様が汎用のリーディングシステムに実装されるはずですから、これから企画を始める出版社などは、IDPFの仕様に準拠しておけばよいと思います。

──リーディングシステムの対応状況は?

境:対応したリーディングシステムはまだありません。先ほどお話したように、Readiumで試しながらノウハウを蓄積していったほうがよいと思います。企業が、独自拡張によって対応させている固定レイアウトは、その企業が運営するストアの専用クライアント(iBookstoreであればiBooks)でしか使えませんので、自社サイトで売りたいと考えている出版社は、仕様を実装したリーディングシステムを待たなければいけないと思います。

──IDPFで取りまとめた意味をどう捉えればよいのでしょうか。

境:Readiumの開発が進むにつれて、それをリファレンス(見本)として実装していくことができますから、汎用のリーディングシステムで固定レイアウトが使えるようになる日は意外とはやいかもしれません。先行している拡張技術による固定レイアウトは、閉じた世界で流通するコンテンツですから、読者が他のリーダーで読もうとして混乱することもないでしょう。読者が自由にリーディングシステムを選べる方式なら、IDPFの仕様に沿って作成し、仕様に準拠したリーディングシステムを推奨することになります。
いずれにしても、Readiumに期待がかかりますね。現在は、デスクトップのChromeエクステンションのみですが、モバイル版(Android 4.0で使用できるChrome Beta)も対応し始めています。

──Androidのバージョンシェアも気になるところですね。

境:先日、ドコモの夏モデルの発表がありましたが、Android 4.0を搭載するスマートフォンが16機種も登場します(タブレットも1機種)。既存のモデルも7月以降、順次アップデートされる予定になっていますので、EPUB3の普及にとっても追い風になる可能性があります。auも夏モデル10機種すべてが、Android 4.0搭載です。
iOSについても、同様でモバイル環境の実装に期待しています。HTML5とCSS3については、すでにiOS5でかなり先行実装されていますので、これからEPUB3対応のリーディングシステムに反映されていくはずです。

──EPUBの固定レイアウトについて、問い合わせは増えていますか?

境:2010年に一度ブームが来て、各社に電子出版事業部などが設置されました。当時、2012年頃にはApple(iBookstore)、Kindleなどの大手プラットフォームが国内でサービスを開始し、EPUBのオーサリング環境や販売システムも整備されるだろうと言われていましたが、残念ながら、まだそこまで至っていません。
2010年頃からずっと準備を進めてきた出版社や企業は、もう待てないという状況で、「はやく事業を本格的にスタートさせたい」と思っています。ですから、リフローで難しいもの(図版が多く高度なレイアウトの実用書や雑誌、ビジュアルが主体のコミックや絵本、写真集など)は、固定レイアウトでいけるなら採用したいと考えているようです。
問題は、やはり小さな画面での可読性の低下です。AmazonのKindle Storeでは、リフローと固定レイアウトを読者が自由に切り替えて読むことができる「ハイブリッド型」の電子雑誌や実用書などが出てきましたが、この方式だと、スマートフォンでもOKです。小さな画面ではリフロー、タブレットでは固定レイアウトに切り替えればよいのです。EPUB3でも(仕様上では)同様の仕組みが実現できますので、はやくEPUB3のビジネス基盤を構築し、読者に提供できるとよいですね。

──ありがとうございました。

2012/6/7開催 EPUB3技術解説セミナー1(固定レイアウト、フォント埋め込み、ウェブフォント)